だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
お兄ちゃんのお陰で、それ以降、何かを黒板に書かれて冷やかされるようなことはなくなった。

でも。

谷田陸は余所余所しくなったし、清水だってことあるごとに「都さんにはフィアンセがいらっしゃいますものね」なんて言う様になったんですけどっ。


やっぱり、これは罠だったのかしら。
それとも、純粋にお兄ちゃんの優しさ……?


まだまだ、子供のわたしには分からないことだらけ。


確かなことは、ホワイトデーの日の前日。
清水と一緒に、キッチンを占領してたくさんのお菓子を作ったってことだけ。

小麦粉で顔が真っ白になったり、バニラエッセンスの香りに騙されてうっかり舐めたらまずかったり。
わたしが初めて皮を剥いたリンゴには身がなかったりもして。

なんだか散々だったけど。
でも、すごくすごく楽しかった。


ホワイトデーの午後、パパとお兄ちゃんと清水と。
四人で、わいわい言いながらそれを食べたんだ。


まだまだ、大人の恋なんて知るずーっと前。
なのに、自分では大人の恋をとっくに知った気分で居た。


そんな日の、あの楽しい光景はきっとずっと忘れないんじゃないかなって。
そんな気がするの。


だってね?
だって、わたし。
パパのことも、お兄ちゃんのことも、清水のことも、


いっぱい、いっぱい、好きなんだもん。



……恥ずかしいから、内緒だよ?


END
< 252 / 253 >

この作品をシェア

pagetop