だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「都ちゃん、そろそろパパも起き上がっていい?」

伏せたまま、こもった声でパパが聞いてくる。
駄目って言っても起きるに決まってるもん。
仕方ないなぁ。

「よろしくてよ、お父様☆」

わたしはふざけた口調で応えた。

「ありがとう、お嬢様☆」

同じ口調で返事が来る。
こういうのを見て、親子だよねぇって清水が思っているんだったら、それはかなり恥ずかしいんですけど、と。
心の中でどうでもいいことを呟いてみる。

「でもさ、今の話フィクションでしょ?」

わたしの虚をついて、パパがそんなことを言い出した。
清水は取り立てて表情を崩すこともない。

「意外とフィクションみたいなのが現実なんですって」

と、涼しい顔で答える始末。
でも、パパもひるまない。

ゆるい口調で言葉を続ける。

「だって、おかしいじゃない。
最初からクラスに同姓が二人いたら、分かりやすく呼び分けるもんじゃないの?
間違えること分かっていてあえて苗字だけで呼んだりする?」

「まぁ、そのくらい気をつかってもらえない立場だったってことですよ」

辛らつなことを述べるときですら、その声に動揺は見られなかった。
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