だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「ねぇ、八色さん」

クラスメイトの女子が、わたしに声を掛けてくる。
よく言われるんだけど、わたし、一人で席に座って黙っているときは声が掛け辛いんだって。

なんでかな?

「なぁに?」

「弥生ちゃんの代わりに今日から来る先生って、どんな人か聞いてる?」

「ううん」

そうでした、そうでした。
我がクラスの担任、大浜 弥生先生は今年の1月から産休に入ったのでした!

「なんかね、あかねちゃんが、さっき校門の前で今まで見たことのないめっちゃイケメンの先生を見たって言うのよ。
その人だったらいいのに!」

「きっとその人よ」

このタイミングで産休に入るのは弥生先生だけだから、見知らぬ教師がいたとしたらうちの担任である確率が高いはず。

なので、確率だけにかけて根拠はないけど、にっこり笑顔で答えてみる。

「やっぱり、そうよね?
八色さんが言うんだから間違いないわっ」

根拠のない話をすっかり鵜呑みにして女子の輪に戻っていく。
子供を誘拐するのなんてわけないんだろうな、なんて。

物騒な考えが頭を過ぎって慌てて思考のスイッチを切り替えた。

まぁ、「男は顔じゃねぇぞ」と小声でぼやいている谷田のせいで我に返ったとも言うんだけど。


そのとき。

がらがらと、教室の前のドアが開く。
クラス全員(特に女子)の好奇心と期待で一杯の視線が、そこに注がれる。
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