だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「青山と八色がクラス委員なんだっけ?」

全員の出席を取りおえてから、先生が言う。

皆がこくりと頷いた。

「じゃあ、始業式が終わったら二人は教室に戻らずに職員室に来てくれ。
以上です。
そうそう。冬休みの宿題を、提出してから各自体育館に向かうこと!」

はぁい、なんて皆ばかにお行儀が良い。

慣れない人に対する気遣いなのか。
彼の人間性がそうさせるのか。

まぁ、どちらにしても動物園のような騒ぎが少しでも収まるならそれに越したことはない。



退屈な始業式の間、わたしは。
今朝のお兄ちゃんとのやりとりを思い出していた。

朝食を食べ終わった後、食堂から出てくるとお兄ちゃんが立っていた。

『おはようございます。都さん、今日から学校ですか?』

相変わらずの優しい口調。
だったけれども、その瞳が心なしか疲れているように見えた。

無敵のお兄ちゃんにしては珍しい、と思ったので思わず足を止める。

『ええ、そうよ』

自分でも嫌になるくらい、つっけんどんな返事しか出来なくてわたしはますます顔を曇らせてしまう。

まぁ、でも。
お兄ちゃんにはとっくに嫌われているんだから、いいか。

『学校に行かないで下さいって言っても、行きますよねぇ?』

『パパが、学校にだけは行っておけって言ってたわ』

『そうですよね』

お兄ちゃんは諦めたように微笑を漏らし、唐突にわたしを抱き寄せた。
あまりにも突然だったので、逃げることも忘れたくらい。

二週間ぶりのお兄ちゃんの腕の中はやっぱり心地良くて、心臓がどきりどきりと軽快にステップを踏み始めるのを止められない。
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