だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
『お兄ちゃん?』

わたしは俯いたまま、声を出す。

『心配なんです、都さんのことが。
いいですか?何かあったらすぐにケータイに電話してくださいね』

その声音は、本当に心配そうで。
え?無敵のお兄ちゃんなのに?なんて思ってしまうほどだった。

『何?どういう、こと?』

お兄ちゃんは質問には答えない。

人が動けないのを良い事に、勝手に頭にキスを落とすともう一度ぎゅっと抱きしめてから、手を放した。

『都さんのことが大事ってことですよ』

柔らかい声、甘い眼差しが真っ直ぐにわたしを包み込んでくる。
キュン、という愛らしい音がわたしの心臓から聞こえてきそうになる。

あ~~~~、駄目駄目駄目。

きっと、パパの娘だから大事にしておかないとまずいってことに違いないわ。

だって、お兄ちゃんは私のこと嫌いなんだから。
そう。一緒に寝てくれないくらいにね。

『ふぅん。
分かったわ、電話する』

わたしは感情を押し殺して、冷たい声でそれだけ言うと後はもう振り返らずに走るほかなかった。

じゃないと、泣いちゃいそうなんだもん。
あの胸に自分から飛び込んで、「どうして一緒に寝てくれないの?」と。

手に負えない子供のわがままを言ってしまうに違いない。
だから、唇を噛んで気持ちを飲み込んだ。


そう。
クラスメイトもガキだけど。
わたしだって、まだまだオコチャマなのだ。

自分が上手くコントロールできないほどには。
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