だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「あー。都ちゃん、遅いっ」

一つ後ろの席、音葉(おとは)ちゃんがハイテンションに声を出す。

「何が?」

教室に入ったときわたしの目に映ったのは、黒板消しを持っている青山くんの姿くらいで。

「今、相合傘が書いてあったんだよー!
青山くんと都ちゃんの」

楽しそうな声は、ピアノの鍵盤が弾かれるように響く。

「……ふぅん?」

だから、青山くん、ちょっと困った顔してるのか。
なんとなく納得。

「あれ?
何か感想は?」

黙っている私を、音葉ちゃんが覗き込んでくる。

「感想って言われても。
わたしが書いたわけじゃないし。
ねぇ?」

むぅっと、音葉ちゃんが唇を尖らせた。
ひょっとこみたい、なんて思う。

……わたし、むやみに唇を尖らせるのやめよう。

なんて、決意するにはもってこいの表情だった。
< 38 / 253 >

この作品をシェア

pagetop