だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
口を開こうとした瞬間。

「早くしろよっ」

なんと。
谷田陸がずんずんと窓際まで歩いてきて、わたしの手を掴んだのだ。

……え?

谷田ってこんなに積極的なヤツだったっけ?
もしや、三学期デビュー?なんていう、面白くもない冗談が頭の中に浮かんだけれど、すぐに消えた。

汗ばんだ手のひら。
まだ、呼吸がまとまらない荒い息。
真剣な瞳。
それらが、ただならぬ何かを物語っていたから。

「早くって?」

話についていけず、私は目を丸くする。

「と、とにかく。
早く帰ろうぜ」

「青山くんじゃなくて、谷田くんだったのね~☆」

わたしたちのすぐ後ろで、楽しそうな歓声を上げる音葉ちゃん。

えーっと。
何のお話でしたっけ?

私はランドセルを掴み、引きずられるように教室を出た。

「何よ?」

走りながら、谷田に問う。

「何かはこっちが知りたいよっ」
< 40 / 253 >

この作品をシェア

pagetop