だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「それに、だいたいどうして谷田陸なのよ?」

「都さんがお話してくれたじゃないですか?
だから、記憶にあったのです」

わたし、谷田のこと何か言ったっけ?

あ、言ったかも。
ことあるごとに、わたしに絡んでくる嫌な男子がいるのよ~、しかも、人のこといつもいつもフルネームで呼ぶからわたしだって仕返しにフルネームで呼んでやるの!くらいは。

そういえばそのとき、清水が涼しいトーンで『なんて呼んでいるんですか?』って聞いたかもしれない。う、あれって相手の名前を簡単に聞きだす誘導尋問だったのかっ。

それにしても、よく、覚えているわね?
少なくとも、それ、五年生ときの話題だったと思うんだけど。

「青山さんも見かけましたけど、どうやらお急ぎのようでしたので声を掛けるのはやめておきました」

青山くんのことはそりゃ、話すわよ。
クラス委員の話をすれば、その9割くらいに青山くんは出てくるんだから、仕方がないわ。

「塾よ、塾。
中学受験に追い込みの時期なの」

「そうでしたね、都さんも」

「ええ、そうですわよ。よろしくね、清水先生☆」

清水は唇を緩ませる。

もちろん、わたしも中学受験を控えてはいるんだけど。(多分、青山くんと同じ進学校)
お兄ちゃんの勉強が気になって、いつも彼の教科書を読んでいたわたしにとっては、中学受験なんて軽い。

それに、パパは自分の知識をひけらかすのが大好きだから、わたしが今、小学生かどうかなんてことはお構い無しにいろんなことを教えつけていくんだもん。

加えて、勉強をしているときは大抵清水が傍に居てくれるから、もはや家庭教師と同等以上の存在だし。
元々、頭はめちゃくちゃ良いんだけど人に教える能力もあるのよね、清水は。

人が苦手なところをピンポイントで見つけ出して、教えてくれたり、トレーニングのためのテキストを購入してくれたり、しているのだ。
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