だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「それが分かれば苦労はしませんよ」

お邸に帰って、ランドセルも下ろさずにお兄ちゃんを捕まえた私は弾む息もそのままに、誰の目をさけてるの?と、質問をぶつけた。

だって、清水ってば「次期総長に口止めされてまして」、っていうばっかりなんだもん。
だーかーら、なんでこんなルール無視の世界にいるのに、そんなに真面目なワケ?

もう、意味わかんないっ。


わたしがじぃっと見つめているので、お兄ちゃんは諦めたように椅子から立ち上がった。
そういえば、怖いおじさんたちの視線をわたし、一身に浴びてない?


お兄ちゃんを探すがあまり、無遠慮に入っちゃったんだわ。
怖い顔しているヤクザのおじさんたちが顔を突き合わせているミーティングルームに。

「あ、あの。
お取り込み中だったら、別に、後で」

嫌だわ、わたし。
これじゃ、スーパーのお菓子売り場で『あれ買ってくれるまで動かない!』って寝転ぶような子供と同レベルじゃない。
他人の都合お構い無しに自分の意見だけを声高に叫ぶと言う点で。

わたしの肩に手を置き、会議室から自然に連れ出す。

「ごめんね、邪魔して」

「構いませんよ」

それにしても、まぁ。
どうしてこの真っ白なスーツが似合うのかしら?

お兄ちゃんは廊下に出て、すとんと腰をかがめわたしと視線を合わせた。
鳶色の瞳に抱きしめられているようで、心臓が勝手にドキドキし始める。
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