だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「本当、お前はいつまでたっても融通が利かないって言うか、真面目って言うか」

苦笑交じりにパパが言って、オーバーに肩を竦めて見せる。
ご丁寧に、手のジェスチャーまでつけて、だ。


「ああ~~っ」

そこで思い出したわたしは、パパを指差してしまった。
ここ、ミーティングルームに程近い廊下だけど、そこは防音になっているのでこっちの声が聞こえることはない、はず。
パパは冗談半分で、耳に指を突っ込んで見せた。

そこまでいちいちオーバーリアクションだと、むしろ感心してしまうほどだ。

「何かな、都ちゃん。
いくら子供だからって、そうそう大きな声をだすものじゃない……」

長々と喋りだそうとするパパの会話を遮って声を出す。

「パパが悪いんだもん」

「ん?」

とぼけたふりして首傾げてますけど、口許笑ってますよ?
ねぇねぇ。

「パパが、お兄ちゃんはミーティングルームに一人で居ると思うって言ったんじゃない」

「そんなこと言ったっけ?」

パパがそらとぼけて言う。

はーらーたーつーっ!

「言ったわよ、言ったからこうやって会議の中断までしてっ」

恥ずかしい目にあったんだから、どうしてくれるの!と、続けて喚こうとしたわたしの頭を、軽くぽん、とはたいてパパが会話を止める。
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