だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「そのお陰で仲直り出来たんでしょう?
むしろ、パパに感謝のキスをくれてもいいくらいじゃないかな?」

えーっと。
日本人なんで、そういう習慣はない方針でよろしいでしょうか、お父様?

わたしはげんなりしながら、ほら、キス頂戴と得意げに腰をかがめるパパを睨む。

「お兄ちゃんと仲直りなんてしてないもんっ。
清水、勉強するから教えて?」

わたしは目の前にあるパパの頬からぷいと顔を逸らして、清水の手を握る。
清水の手の冷たさで、自分が相当熱くなっていることを自覚した。

「そうやって、また、逃げるの?
この前は大雅くんから、今日はパパから。
どこまで逃げ切れるのかなぁ?
ねぇ、都ちゃん。
自分の影は、どこまで逃げても後ろにぴったりくっついているもんだよ」

ふざけた口調のクセに、人の心をぐっさりと突き刺すから、パパの言葉って嫌い。
皆が一目置くのも、きっとこんなところが原因なのよ。

一目じゃなくて、一歩置かれてるんだわ、きっと。

「知ってるわよ」

わたしは清水の手を握ったまま、パパを見た。

パパとの距離、約3歩。

……お兄ちゃんとの距離は、今。
  何歩分くらい、あるのかしら?

そんな疑問が、ふと、胸のうちを掠めていく。
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