だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「おはよ、谷田陸」

惰性で挨拶をして、それから思い出した。

「昨日は、ありがとう」

「いや、お小遣いもらえてラッキーだったし。
太っ腹だな、八色都の『家の人』」

『家の人』?
清水は一体なんて名乗ったのかしら。
そんでもって、その怪しげな名乗りをあっさり真に受けちゃったわけ?
谷田陸ってば!!

わたしが口許を綻ばせているのにも気づかず、谷田が話を続ける。
短い髪、寒さで頬がかさかさになっているのが、いかにも子供らしいな、なんて思う。

これでも、サッカーが得意でクラスの女子からはそこそこ人気なのが凄い。

「でもさー」

「ん?」

「いくらなんでも、大人に対して苗字呼び捨ては酷くない?」

「……そ、そう?」

思いがけない指摘に、わたしは目を丸くした。

「うん、俺、びっくりした」

「そ、そっか」

そうだったのね。

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