だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「八色都っ」

はぁはぁと、息の荒い声が、わたしを呼ぶ。

ようやく足を止めて振り向けば、何故か、谷田陸がそこにいた。

「何やってんの?」

わたしも息を弾ませながら、そんなことを言ってみる。

「何って、お前を追って来たに決まってるだろう?」

視線をそらせながら、ぶっきらぼうに呟くその言葉が、子供と大人の中間点を彷徨っている不器用な存在を際立たせ、わたしは微笑まずにはいられなかった。

同じところに居るんだね、谷田陸と、わたしって。

「それはそれは。
黒板消して、わたしを追って。
谷田陸も忙しいね」

なんて、可愛くない台詞を感情もなく平らに吐いたつもりなのに。
どうしたっていうのかしら。

わたしの声は震え、台詞はまともに喉を通らない。そして、頬には涙が溢れていた。

なんでよっ。
あんなの子供のバカ騒ぎじゃない。


わたしが、あんなんで、傷つくはず、ない……じゃない……。
ましてや、クラスメイトの前で泣くなんて。

ありえないわよ。
わたし、銀組若頭紫馬宗太の娘、なのよ?その辺の弱っちい小学生なんかと一緒にしないで。



……ありえ、ないわよ。
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