だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「こんにちは~」

恐る恐る、さぐりさぐり、わたしは二人の小さな子供に声を掛けていた。

きょとんと、わたしを見つめる大きな瞳。
虐待された子供特有の怯えた様子が目に浮かぶ。

もしもわたしたちが大人だったら、この二人は脱兎の如く逃げ出していたに違いないと思われるような緊張感が漲っていた。

一人の子はやや浅黒い肌をしている女の子。7歳くらいかしら?
もう一人は、アジア系の顔をした男の子だった。多分、5歳くらい。

「Hello!」

それでも二人は口を開かない。

「ね、マックとか食べにいかない?」

おなかがすいているに、違いない。
そう思って声を掛けるのに、二人はじりじりと後ずさっていく。

頬には殴られた後が、手首は赤黒くすりむけていた。
どんな虐待を、誰に受けたのか。

心が痛む。

「どうしよう、陸。
全然言葉が通じないんだけど」

「ねぇ、都。
お金持ってない?」

「あるよ」

財布から千円札を取り出す。

「さんきゅ。
ちょっと二人を繋ぎとめていてくれる?」

そういうと、黒のランドセルをベンチに投げ、返事を聞く間もなく踵を返して走り出していた。
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