だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
二人、手をぎゅっと繋いで不安げな視線を向けている。

一人残されたわたしはただただ焦っていた。

どうすればいいのかしら。
ポケットのケータイ電話を握り締める。

お兄ちゃん……。
今日も学校のはずだけど、わたしが電話したらきっと手を打ってくれるに違いない。

パパは何処にいるか分からないけど、なにかアドバイスくらいくれるはずよ。

清水だったら、車で駆けつけてくれる。


そこまで考えて、ぶるぶると頭を振る。
こんなんじゃ、いつまでたっても大人になれない。

そうよ。
わたしと谷田で助けてようやく大人になれるんだわ。

飛び降りれないなら、いっそ。
昇りきってやろうじゃない、大人の階段を一気にさ。

そんな決意なんてちびっこたちに伝わるはずもなく、大きな瞳はみるみる潤んできた。

えーん。
言葉も通じないし。
わたしの方が泣きそうよ、ね?

驚くべきことに、二人が持ちいる言語も別々のもので、どうやって意思疎通を図っているのか見当もつかない。

「ほら、わたし、敵じゃないよ」

両の手のひらを見せてみる。

が、二人、びくんと肩を震わせ余計に肩を寄せ合うだけ。

1月の風が冷たく、公園に転がる空き缶を音を立てて転ばせていく。

谷田陸。

警察に捕まったり、して、ないよねぇ?
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