だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「いったいお前、いくら小遣い貰ってるんだよ」

乱暴に噛み砕いたダブルチーズバーガーを嚥下してから、谷田が聞く。
もちろん、向かいで食べている二人の子供にはわたしたちの話なんて分からないに違いない。

まるで、ぼろきれのような服を着ていた二人も、今はトレーナーとジーンズ、そして厚手のコートに着替えていた。

もちろん、これも。
わたしが購入した。

だからこそ、谷田が口を開いたのだろう。

「お小遣いなんて特にもらってないわ。
それに、これ、お年玉だもん。
気にしないで。わたしを甘やかしたい親戚がいっぱいいるの」

わたしはにこりと笑ってみせる。
上手くできているといいな。

本当は親戚なんていう人間を、一人たりとも知らないわたしは、その言葉がもたらす苦い砂利のような感覚を無理矢理飲み込んだ。

テリヤキバーガーを、コーラで飲み込むのと同時に。


「さて、これからどうする?
俺はやっぱり、警察に届けるべきだと思うんだけど」

谷田が問うが、それ以前に目の前の二人のちびっこがそういう瞳でわたしたちを見ていた。

警察に届ける。

真っ当な意見に聞こえないことはない。

でも。
そこに届けることによって、この子達を逃げ出した場所に連れ戻すことになるかもしれない。

そう思うと、安易に答えは出せなかった。
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