だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「ちょっとだけ相談したいの、良い?」

わたしはポケットからケータイ電話を取り出すことにした。
もう、これ以外に思いつかない。

お兄ちゃんに頼る以外には答えを導き出せそうにない、と思った。
悔しいけれど、仕方がない。

きっとお兄ちゃんはてきぱきと、全く困ることもなしにこの件を片付けてくれるに違いない。

そう思ったのに。

わたしがピンクのケータイを出した瞬間。
目の前でフライドポテトを至福の顔で頬張っていたチビッコ二人の顔が強張り、脱兎の如く逃げ出したのだ。

「待って!」

考えるよりも前に、二人を追いかけていた。

これがもう、思った以上に逃げ足が速い。
追い詰められた草食動物並みのスピード、とでも表現したらよいのかしら。

わたしも谷田陸も全力疾走で二人を追う。
小さい身体を武器に、狭い路地、狭い路地へと入っていく。

コンクリートで手が擦れても、いちいち痛がっている余裕すらなかった。

「待ってよっ」

わたしと谷田は土地勘のまるでない都会のオフィス街の路地を、ぐるぐるぐるぐる、折りに閉じ込められたハムスターのように導かれるままに走り続けるほか、なかった。
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