だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
それから、清水に外に出てもらって小川から都さんのケータイとちょっとした情報を手に入れて来て貰った。

その間に母からも連絡があって、都さんが教室を抜け出したのはクラスメイトがふざけて書いた落書きが原因だったと聞かされた。

……落書き。

どんな類の落書きなのだろか?(担任の教師が見たときは黒板は既に綺麗になっていたし、クラスメイトたちは口篭って事実を言えないらしい)
彼女はどれほど傷ついただろうか?

教室に居るのが辛くなるほどショックな目にあったなんて。
想像するだけで、俺の心が抉られるように痛くなる。

それに。
その落書きを消して都さんの後を追ったという男子生徒の存在だって、気にならないといえば嘘になった。

……谷田陸。

その名前には聞き覚えがある。

『そいつさぁ、わたしのこと、フルネームで呼ぶんだよ。
ねぇ、フルネームで人の名前呼ぶのってどんな時?』

数年前、真剣に都さんが清水を問い詰めているのを見たことがある。
それが、谷田陸だった。

『同じ苗字の人が居るとき、とか、ですかね?』

『八色なんて、うちの学校には私しか居ないもんっ』

『そうですねぇ。ご本人に聞いてみたらどうでしょう?』

清水の提案にも、都さんは不服気に唇を尖らせていた。

『聞いたわよ!でも、答えはこなかったのっ。
だから清水に聞いてるんじゃないっ』

『だからって。あの、都さん。
接続詞の使い方、間違えてらっしゃいますよ?』

清水の言葉なんて耳に入らないようで、その後も一方的にああだこうだと責め立てて、傍に居た俺と紫馬さんを笑わせてくれてたっけ。
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