だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「知らないわ、その男」

ごめんなさい、と言おうとするのを柔らかく遮られる。

「知らないほうがいいんです。
もし、どこかで見かけても決して近寄らないでくださいね。
いいですか?
絶対に逃げてください、分かりました?」

催眠術を思わせるような、しつこい言い回しにわたしはこくりと頷くほかない。

だって、そりゃ。
銀組次期総長が真面目な顔して「この男に近寄るな」と言っているんだから、それは相当ヤバいんだろうって、説明なくても想像くらい出来るじゃない?


ダイニングに行くとしばらくして、清水が甘い香りのする器を持ってきてくれた。
それに並べられる色とりどりのフルーツ。

イチゴに、パイナップル、バナナ、キウイ。
フルーツなのに、まるでショーケースに並んでいる宝石を思わせて、わたしの目を輝かせる。
確かに、カットして並べてある様だけ見ても、とても綺麗に並んでいて清水の几帳面さを表現しているみたい。

ついでに、マシュマロが並んでいて、その隣には薄く焼いたクレープの皮に、ホイップした生クリームまで!

目を輝かせているわたしの前で、串にイチゴを刺して、器の中のチョコレートをたっぷりつけて渡してくれる。

何が凄いって、ねぇ?
清水はこんなときでさえ、表情一つ崩さないんだからっ。

絶対、本物の執事より凄いと思うの。
あ、本物の執事なんてみたことないけど、ね!

< 92 / 253 >

この作品をシェア

pagetop