水中鉄道の夜-始発駅-
 取りあえず、大人1枚と、学生1枚分の料金を払って、エレベーターで上に上がって会場に入る。
 まだ、前回が終わっていないらしく、次回待ちで並んでいる列に並ぶ。

「何か欲しいものはある? 何か買ってくるけど」
「座ってからでいいですよ。それよりここで待っている間、話でもしませんか?」
「話?」

 話と言われても何を話すのかわからず、首を傾げていると、トール君は壁にもたれた。

「枝実サンはお見合いするって言ってましたけど、いくつなのか聞いたりしたら失礼ですか?」
「年? 27」
「27!?」

 トール君の驚いたような声に、こっちがビックリしてしまう。
 まあ、年齢を言うと、たいていこうゆう反応が返ってくるので、今さらなのだけど・・・。

「枝実サンって、かなり童顔なんですね。俺、ハタチぐらいだと思っていました」
「よく言われる」
「でも、本当にその年まで彼氏とかっていなかったんですか?」
「出会いがなかったの。・・・・・まぁ、私が気付かなかっただけなのかもしれないけどね。人並みの容姿だし、プロポーションがいいわけでもないし、目立たないんだと思う」
「え? 枝実サンってキレイだと思いますけど?」
「ありがとう」

 お世辞を言ってくれるなんて、トール君って結構優しいんだなぁ。
 でもね、家にも鏡があって、毎日見ているんだもん、自分があまり美人じゃないってぐらいわかる。
 正直にそのことをトール君に言うと、眉を寄せてため息なんかつかれてしまった。

「よく、鈍いって言われません?」
「はい?」
「いえ、何でもありません」

 確かに友達とかには鈍いって言われるけど、まさかトール君もそう思ったとか言わないわよね?
 私にとってあまりにもナイーブな問題なので、それはサラリと流す事にする。

「映画を観た後はどうするんです?」

 そう聞かれ、少し恥かしかしく思ったものの、高校の時に憧れていたデートの内容を素直に話した。

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