美しい君の名を
携帯が鳴る。
彼女から。

ひとりで帰る気なのかって聞くから、違うよって答える。
だったら早くしろって。



「あたしも、ひとりで帰る気なんか少しもない」



まだ声が怒ってるけど、ほんとに素直。


「ごめんね。走るから20秒待ってて?」




その瞬間、電話は切れて、少し離れたところから「いーーーっち!」という彼女の声が聞こえてきた。


大声で数えてる。


数が増えていくたびに早く来てって言われてる気がする。

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