セツナイ視線。


階段をかけ上がって、男子トイレの前を通った時、武石ハルと出くわした。


「あっ!さっきはありがとう!」

「お~。その顔はうまくいったのか??」


「ぃゃ~フラれちゃったんだ!」

「…そっか。でもあんた頑張ったじゃん。」

武石ハルは廊下の手すりに肘をついてよしかかった。

…不思議な人。
頑張ったじゃん、か。
今日初めて喋ったのに、なんだかこの人は馴々しい。

けどその馴々しさが、心地いい。

「あはは~うん頑張ったかも~…ってあれれ?」



ギョッとした顔で私を見る武石ハル。



気がつくと、私の目からは、ぽろぽろ涙が溢れ出ていた。

「…あれ、止まんないや、はれれ…」


さっき亮太の前で我慢してた分が、今になってわき出てきたようだった。

拭っても拭っても、涙が出た。


「ごめ、…なんか…あは、はははっ…ひ~ん……っく」



「泣きながら笑ってんじゃねえよ(笑)」


武石ハルは、私の頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でた。



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