セツナイ視線。


羽鳥さんは何も受け身をとっていなかったので、そのボールの衝撃で後ろにすっころんだ。




「大変だ!!!!」

「お、おい!」


恭一が私を呼ぶのもお構いなしに、私はすぐに階段を駆け降りて、ハル達の元へ走った


「おい大丈夫か!?」


「明菜!!大丈夫!?」



周りにはバスケをやってた男子も集まって、ざわざわと人だかりができていた。
私はそれを掻き分けて割り込んだ。

「羽鳥さん大丈夫っ!?」



私が訪ねると、羽鳥さんはコクコクとうなずいたが、顔を手で押さえ、ポタポタと鼻血が出ているようだった。


「ごめんなさい!!!ほんとにごめんなさい!!!」

ボールを投げた男子が半泣きで謝っている。




「いいの、大丈夫…鼻血くらいすぐ止まるから」


羽鳥さんは弱々しい笑顔で呟くと、鼻を押さえながら立ち上がろうとした。



「いや、転んでるし、保健室連れてくわ。これで鼻押さえとけ。」

ハルは腰のタオルを外すと、羽鳥さんの顔にくっと押し当てた。

乱暴だったけど、ハルなりの優しい気遣いだった。


羽鳥さんは嬉しさで感動しているのか、目がうるうる充血していた。



「立てるか?」

「あ、ハイ……」


グイッとハルに腕を引かれ、立ち上がる羽鳥さん。



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