【短】Eqeal
今までは別に、話す必要なんてないと思ってた。

隠してたわけじゃないけど、変な気恥ずかしさがあったから。


「昔俺は親に連れて行かれたコンサートで、一人のピアニストに出会った。その音がすごく気に入った俺の夢は、そのときから作曲家」


ゆっくり口を開いた俺の話を、しっかり聞いてくれる美羽。


「ピアニストじゃなくて?」


確かに、今の話だけならそう思うよな。




「その人は自分が創った曲しか弾かねぇの。しかもどの曲も、色が全然違くて…なんつーか!!心に響いたっ」


興奮して、つい声がデカくなった。


「……直樹うれしそうだね」


「あ、あー…」


話すって決めてたくせに、いざとなるとやっぱ躊躇う。


「それで?続き教えて?」


でも目の前の美羽の笑顔に安心して、もう一度口を開く。
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