天使の林檎
 友紀と仲良くなってから大きく変わったことがある。

 智と2人きりで一緒に帰っていたけど、そこに友紀が加わった。
 1人で帰る友紀を見て、智が誘ったのだ。

 魔のトライアングル。

 すごく嫌な予感がする。
 今回も予感は当るだろう。

 一緒に帰るようになってから、智は友紀とばかり話す。
 彼女は私なのに、休み時間とかに来ても友紀と趣味の合っている話ばかりして私は会話に入れない。

 智はすごく嬉しそうに話していて、友紀に気持ちが傾いているように見えた。

 いくら始まりが『LIKE』でも、付き合っている時間が長くなればなるほど『LOVE』に心が傾く。
 今の私の気持ちは『LOVE』じゃないけど『LOVE』にかぎりなく近い。

 嫉妬はしないけれど、やっぱり気持ちは沈む。





 新学期が始まって1週間後。

 新入部員獲得の要であるオリエンテーション準備の打ち合わせに急遽呼ばれ、私は美術室に向かっていた。

 もちろん智にはメールでそのことは連絡済み。
 それに智も部活に出るから、一緒には帰れる。

 メールの返事を確認しようとポケットに手を入れたとたん、私はお気に入りのメモ帳が入っていないことに気づいた。
 一応他のポケットも確認したけど、やっぱり入ってない。

 カバンは教室だった。

 取られるものはないし、美術部は部活がないので、打ち合わせが終われば帰れるからと教室に置いたままにしておいたのだ。

 ありゃりゃとばかりにくるりとUターン。
 廊下は走ってはいけないので、早歩きで教室へ向かう。

 自分の教室が見えてきて、ドアに手を置いた時、教室内に人の気配を感じた。

 まだ誰かいるんだろうけど、それにしてもなぜ前後のドアが閉まっているのだろうか?
 不思議に思いつつ、そっとドアを開けて中の様子を伺う。
 
 教室には2人のシルエット。

 電気は消されているから、明るい場所にいた私には一瞬それしかわからなかった。

「付き合って欲しい」

 男の声がして、心臓の鼓動が跳ね上がる。
 聞き覚えのある声がして地面が揺れた・・・・・・。

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