天使の林檎
 諏訪君が仮入部したとたん、部内は混乱を極めた。

 なんと、入部希望者が23人も来たのだ。
 うち男子はたった1人。

 入部希望の男子生徒はこれで3人。
 比べて女子生徒は22人。
 合計25人の入部希望者がいることになる。

 元々私を含めて16人の部員がいた。
 そうすると全部で38人の部員がいることになり、1クラスの人数よりも多い。

 いくら広い美術室でも、全員がいるとすごく騒がしかった。
 
 入部希望の女子生徒の殆どは諏訪君が目的らしく、諏訪君と少しでも仲良くなろうとし、指導する先輩をそっちのけにして先輩達を怒らせてしまう。
 元々いた女子部員も諏訪君にかまいたくて仕方ないようで、それがさらに騒ぎを大きくし、部活はまともに活動出来ない状態が3日続いた。

 美術部の部長は女子で、笹沼先輩。
 副部長は男子の筒井先輩だ。

 部長も我慢の限界を迎えたようで、突然、しばらく男女別で場所を別けて活動することになった。

 男女間の移動は禁止。
 ただし、1年生だけはアドバイスに限り移動可能とされた。
 だが、それも1年生同士のアドバイスは禁止。
 必ず顧問の先生か、先輩にアドバイスを求めなければならない。

 また、活動態度に問題があり、顧問、もしくは部長や副部長に3回以上注意されたら強制退部のルールが出来た。
 
 当然、女性部員の殆どはそれに不満だったが、現状的にまともな活動出来ないことで顧問の先生もさすがに怒っており、『不満のある者は退部してくれて結構』と言ったとたん静かになった。

 そうして前と後ろで場所を別けて活動することになり、同性の部員を指導することで活動が再開された。

 一応全員に指導はするが、最初から本当に美術部に入りたい子とそうでない子では真剣みが違ってくる。
 完全に諏訪君が目的で入部してきた子はまともに絵が描けない上に、やる気もない。
 
 段々と指導する先輩の態度も冷たいものに変わり、居心地が悪くなっていく。
 目的の諏訪君とも全然話せず、描きたくもない絵を描かされて当然面白くない。
 でも、辞めると諏訪君との関わりが切れてしまうので、適当に活動している振りをする。

 そうして問題の1日が終わった。

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