天使の林檎
 新学期が始まってから1ヶ月ちょっとが過ぎた頃。
 仲良くなった友紀とも益々仲を深め、部活では諏訪君の側にいて指導する。

 私が諏訪君を指導することになったことで、部活内の男女別が実質終わりを告げ、場所も今まで通り好きな所にいられるようになった。

 私達は、諏訪君が私に影響されないようにする為、キャンバスを挟んで向き合う形で座っている。
 これで諏訪君は私の作品を見ることなく、私も指導し易い。

 時々、他の女子部員が諏訪君にちょっかいをかけてくるが、私が指導係りと決まったせいでおおっぴらには話し掛けなくなった。
 もちろん、私には普通に話し掛けてくる。

 いたって和やかに活動出来る様になった。

 部活が終了すると、私がキャンバスを片付けている間に、必ず諏訪君がイーゼルを片付けてくれる。
 そしてどうしたわけか、駅まで一緒に帰るようになっていた。

 諏訪君を指導することが決まった日からそれは続いている。

 男女別になってから、諏訪君は内藤君ともう1人の新入部員である、有田君と一緒に途中まで一緒に帰っていた。
 1年生は、自分達が使った場所の掃除をしなければならないので、帰るのが1番遅い。
 その為、1年生同士は仲良くなりやすいのだ。

 だが、私が指導することになってから、諏訪君は私を駅まで送ると言って遠慮しても聞かなかった。

 で、結局1年男子3人と、私、私が一緒に帰る3人の2年女子部員と、なぜか私を慕ってくれる彫刻が理由で入部した1年の女子と8人で駅まで歩いて帰るのが日常になっていた。

 そんな日々が重なると自然と交流が深まる。

 気づけば、まだ同じ美術部員という枠の中ではあるが、私と諏訪君の距離は随分と近くなっていた・・・。

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