天使の林檎
土砂降りって訳でもなく、比較的小雨っぽい雨。
私と身長がほとんど変わらない諏訪君だから、小さい傘でも無理はなかった。
諏訪君は私が濡れないように気を使って傘を傾けるので、私は、時々傘の先を指でちょこんと押し戻す。
いくら肩にビニールがあるといっても、やっぱり後輩を濡らしてしまうのは気がひける。
「私、駅についたら親に迎えに来てもらうから、このまま傘使っていいよ」
諏訪君は私の降りる駅より先の駅で降りて、そこからバスだと聞いていた。
駅に着いて傘をたたむ諏訪君にそう言う。
うちのお母さんは専業主婦だし、なにより車の運転が好きだから頼めば迎えに来てくれる。
このまま諏訪君が傘を持って行っても何も問題はない。
「可愛い柄の傘で悪いけどね」
「でも・・・」
「でも・・・はなしで、お礼を言って?」
「・・・はい。ありがとうございました」
「ううん!」
諏訪君は上下関係をすごく気にする。
先輩の言葉は殆ど無条件で受け入れてしまう。
本心ではどう思っているかわからないけど、先輩の言葉にNOと言えないみたい。
だから諏訪君と話す時は充分注意するようになった。
何でもない言葉をうっかり言っただけでも、諏訪君には命令になってしまうからだ。
「明日、ちゃんと返しますね」
「うん。でも傘は他にもあるからあまり急いでないし、部活の時とかついででいいよ」
「はい」
また諏訪君のあどけない笑顔が浮かんだ。
いつものふんわりとするような天使の笑みではなく、諏訪君の年齢の男の子なら誰でも浮かべるような笑顔。
その笑顔が私を優しい気持ちにさせる。
天使の微笑みじゃなくてもいい。
諏訪君が心から素直に笑える笑顔をもっと見たい。
そう、思った・・・・・・。
私と身長がほとんど変わらない諏訪君だから、小さい傘でも無理はなかった。
諏訪君は私が濡れないように気を使って傘を傾けるので、私は、時々傘の先を指でちょこんと押し戻す。
いくら肩にビニールがあるといっても、やっぱり後輩を濡らしてしまうのは気がひける。
「私、駅についたら親に迎えに来てもらうから、このまま傘使っていいよ」
諏訪君は私の降りる駅より先の駅で降りて、そこからバスだと聞いていた。
駅に着いて傘をたたむ諏訪君にそう言う。
うちのお母さんは専業主婦だし、なにより車の運転が好きだから頼めば迎えに来てくれる。
このまま諏訪君が傘を持って行っても何も問題はない。
「可愛い柄の傘で悪いけどね」
「でも・・・」
「でも・・・はなしで、お礼を言って?」
「・・・はい。ありがとうございました」
「ううん!」
諏訪君は上下関係をすごく気にする。
先輩の言葉は殆ど無条件で受け入れてしまう。
本心ではどう思っているかわからないけど、先輩の言葉にNOと言えないみたい。
だから諏訪君と話す時は充分注意するようになった。
何でもない言葉をうっかり言っただけでも、諏訪君には命令になってしまうからだ。
「明日、ちゃんと返しますね」
「うん。でも傘は他にもあるからあまり急いでないし、部活の時とかついででいいよ」
「はい」
また諏訪君のあどけない笑顔が浮かんだ。
いつものふんわりとするような天使の笑みではなく、諏訪君の年齢の男の子なら誰でも浮かべるような笑顔。
その笑顔が私を優しい気持ちにさせる。
天使の微笑みじゃなくてもいい。
諏訪君が心から素直に笑える笑顔をもっと見たい。
そう、思った・・・・・・。