天使の林檎
次の日、やっぱり雨が降っていて、私は意気揚揚とお弁当を持って友紀と美術室に向かう準備をした。
美術室準備室の鍵は私が持っているが、だからと言っていつでも都合のいい時に使えるわけじゃない。
大抵は鍵がかかっていて先生に許可なしでは鍵が使えないのだ。
でも、ちゃんと許可をもらっているので、堂々と美術室に入れる。
もちろん食べ終わったら、後片付けと空気の入れ替えをしなければならない。
だって、美術の授業に来たらお弁当の匂いがしたなんてマズイでしょう?
教室で食べるより、そう言った意味では面倒だけど、慣れた美術室の方がいい。
友紀と並んで、美術室に向かう途中の廊下でバッタリ諏訪君と会った・・・。
「堀口先輩?」
「諏訪君?」
諏訪君の手には昨日貸した折りたたみ傘を持っている。
昼休みだからわざわざ返しにしてくれたのだろう。
諏訪君は私の手にあるお弁当を見る。
「これからどこかへ行くんですか?」
「うん、美術室。浜口先生がそこで食べてもいいって言ってくれたの」
その言葉に少し驚いた表情になり、その視線が隣にいる友紀に移った時、諏訪君の大きな瞳がさらに大きくなる。
それを見た時、私の心臓がドキンと大きく鼓動してしまう。
一瞬、智のことが思い出された。
諏訪君が友紀を見て、少し頬を染めて視線をすぐにそらす。
とっさに友紀を見ると、友紀は微笑みを浮かべて私を見ていた。
今の諏訪君の様子を友紀は気づかなかったようだ。
「ね、桃、ちゃんと紹介してくれないの?」
諏訪君とは会ったことはなくても、友紀には色々話していたし、諏訪君のことも知っている。
それに諏訪君を知らない生徒はいないだろう。
彼が誰かはわかっているのに、友紀は私から紹介して欲しがる。
「あ、ゴメン。美術部の後輩の諏訪君」
「こんにちは、桃のクラスメートの松川 友紀です」
「・・・初めまして」
いつもの諏訪君とは違う、硬い表情。
随分と恥かしがっているようだ。
なんとなく、気持ちがモヤモヤしてしまう。
美術室準備室の鍵は私が持っているが、だからと言っていつでも都合のいい時に使えるわけじゃない。
大抵は鍵がかかっていて先生に許可なしでは鍵が使えないのだ。
でも、ちゃんと許可をもらっているので、堂々と美術室に入れる。
もちろん食べ終わったら、後片付けと空気の入れ替えをしなければならない。
だって、美術の授業に来たらお弁当の匂いがしたなんてマズイでしょう?
教室で食べるより、そう言った意味では面倒だけど、慣れた美術室の方がいい。
友紀と並んで、美術室に向かう途中の廊下でバッタリ諏訪君と会った・・・。
「堀口先輩?」
「諏訪君?」
諏訪君の手には昨日貸した折りたたみ傘を持っている。
昼休みだからわざわざ返しにしてくれたのだろう。
諏訪君は私の手にあるお弁当を見る。
「これからどこかへ行くんですか?」
「うん、美術室。浜口先生がそこで食べてもいいって言ってくれたの」
その言葉に少し驚いた表情になり、その視線が隣にいる友紀に移った時、諏訪君の大きな瞳がさらに大きくなる。
それを見た時、私の心臓がドキンと大きく鼓動してしまう。
一瞬、智のことが思い出された。
諏訪君が友紀を見て、少し頬を染めて視線をすぐにそらす。
とっさに友紀を見ると、友紀は微笑みを浮かべて私を見ていた。
今の諏訪君の様子を友紀は気づかなかったようだ。
「ね、桃、ちゃんと紹介してくれないの?」
諏訪君とは会ったことはなくても、友紀には色々話していたし、諏訪君のことも知っている。
それに諏訪君を知らない生徒はいないだろう。
彼が誰かはわかっているのに、友紀は私から紹介して欲しがる。
「あ、ゴメン。美術部の後輩の諏訪君」
「こんにちは、桃のクラスメートの松川 友紀です」
「・・・初めまして」
いつもの諏訪君とは違う、硬い表情。
随分と恥かしがっているようだ。
なんとなく、気持ちがモヤモヤしてしまう。