天使の林檎
 年下なんて興味はない。
 1日でも年下だったら恋愛対象外!

 そんな宣言を、好みの異性を聞かれる度に言ってきた。

 もちろん年下でも私より優れている人はたくさんいることを知っている。

 それでも私にとって、年下は好みのタイプじゃない・・・・・・。

 諏訪君は可愛い後輩だ。
 それは本心からで、彼に対し恋愛感情はない。

 でも、彼が控えめに微笑んだりすると手を差し伸べたくなる。

 私に天使の微笑みを浮かべると、モヤモヤした気持ちになる。

 彼が、無邪気な普通の笑顔を私に向けてくれるとホッとする。

 諏訪君は誰から見ても、一瞬で目を奪われるほど綺麗な子だ。
 ガラス細工のように繊細で、色もなく透けたような心を隠す。

 彼には人間くささを感じない。
 まさに天使だ。
 
 でも、それって幸せには見えない。

 私の絵が好きだって言ってくれた。
 私が指導係りになって、面倒を見ている。

 だから、もっと幸せそうにいて欲しい。

 もっと年齢相応に、感情を表に出せばいいと思う。


 たくさん笑って。

 怒って。

 困って。

 驚いて。


 天使なんかじゃなく、普通の男の子と同じでいて欲しい。
 
 だから、天使なんかにならないで・・・・・・。

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