天使の林檎
 2階の渡り廊下の真ん中にある掲示板。
 クラス替えの紙が張り出されている。

 まず、自分の名前をチェック。

 2-Dに自分の名前を見つけた。
 担任は知らない男の先生だ。
 
 次に智を探す。

 残念なことに、F組だった。
 離れちゃうのは寂しいけど、彼氏なんだから大丈夫だよね。

 次に里子ちゃんと理香ちゃんの名前を探す。

 里子ちゃんはB組。
 理香ちゃんはA組だった。

 この2人とは合同授業でも一緒にはならないので、ちょっと安心した。
 また揉めるのはちょっとキツイ。

 そう考えていると肩を叩かれ、振り返ってみれば秀ちゃんがいた。

「よっ! 桃」

 秀ちゃんが笑顔全開で左手を上げて挨拶をしてくる。

 フルネーム、小池 秀二。
 生まれた時からお隣さんで、たった20日違いで後に秀ちゃんが生まれた。
 幼稚園から高校まで、ずっと学校が一緒。

 身長は私とあんまり変わらないけど、クリクリの大きな瞳が印象的。
 人懐っこく、すぐに誰とでも友達になるからか、すごい友達が多い。

 でも、秀ちゃんは面倒見もいいし、付き合いもいいから友達が多いのも当然なのかもしれない。
 
「秀ちゃん、おはよ」
「おう。あのさ、一緒に行こうと思って迎えに行ったんだぜ?」
「そうだったんだ。ごめん」
「いいよ」

 隣とは言え、ざわざわ迎えにきてくれたらしい。
 秀ちゃんは優しいから、1年の時の事情を知って心配してくれたんだろう。

 謝る私に何でもないことのように流す。

 活動的な秀ちゃんはいつも制服がくたりとしているんだけど、今日はシャキンとしてる。
 クリーニングから戻ってきたばかりなのかもしれない。

「な、同じクラスだな?」
「え? 嘘! ホント?」

 秀ちゃんの言葉に、慌てて自分のクラスを確認する。
 男子の所に秀ちゃんの名前があった。

「おいおい、気づかなかったのかよ」
「ご、ごめん。見たばかりだったから」

 苦笑する秀ちゃんに慌てて言い訳するが、そんな私の様子が楽しいのか、クスクスと笑っている。

< 5 / 49 >

この作品をシェア

pagetop