天使の林檎
 秀ちゃんは前髪をかき上げて、優しく微笑む。

「同じクラスになるの、久しぶりだな?」
「うん」

 同じクラスに秀ちゃんがいるとわかっただけで、随分と気が楽になった。
 やっぱり、秀ちゃんがいると心強い。

「なんだよ、嬉しそうに笑って。お前の彼氏にそんな顔見られたら、俺の上で餅焼かれちゃうかも」

 秀ちゃんの冗談に笑っていると、ポケットの携帯が鳴った。
 表示を確認してみれば、智だ。

「うわ~、ナイスタイミング。智からメールだ」
「え? マジ? ヤバイ、どこかで見てんじゃねぇのか?」

 キョロキョロと辺りを見回す秀ちゃんを軽く小突き、携帯をパカっと開いてメール画面を出す。

「まさか。今日から朝錬だって言ってたし、まだ終わってないでしょう。あれ、そう言えば秀ちゃんは?」
「あのな。新学期初日から朝錬がある部活なんてテニス部ぐらいだっちゅーの。陸上部の朝錬は来週からだよ」
「テニス部、朝錬って言うより、ミーティングみたいなものだって聞いたよ。コート使わないって」
「だうろうな」

 智からのメールは、自分のクラスを聞くものだった。
 私は秀ちゃんと話しながら、メールを打ち込む。

「で、彼氏、なんだって?」
「うん? ああ、クラス表見てたらクラス教えてって、そのままクラスに行きたいみたい」
「普通、新学期初日なんだから、彼女の顔を見に1番に来ねぇ?」
「別にいいよ。それに一緒に帰る約束してるし」
「ふうん」
「ね、私達も自分のクラスに行こうよ」

 納得いかない表情の秀ちゃんを引っ張って、一緒にクラス向かう。

 正直、べたべたした付き合いは苦手だ。
 異性とのお付き合いは初めてだし、良く判らない。

 人によっては付き合ってすぐにキスした子とかいるけど、私と智は手を繋いだばかりだ。
 まだ付き合って日も浅いし、ゆっくり近づいていく付き合いの方がいい。

 だって、まだ自分の世界で精一杯だから・・・・・・。

< 6 / 49 >

この作品をシェア

pagetop