天使の林檎
 新しいクラスに入ると、黒板に紙が貼ってあって、チョークで出席番号順と書いてあった。
 近づいて紙を覗くと、四角が一杯書いてあり、その中に人の苗字が書いてある。

 どうやらこの通りに座れって意味みたいだ。

 すぐに秀ちゃんと離れて、書いてある席へと向かう。
 私の席は、廊下側の後ろから2番目だ。

 私の後ろにはすでに人が座っていて、その女の子と目があった。
 びっくりするぐらいの美少女。

 柔らかそうでふわふわの髪。
 大きくてぱっちりとした瞳。
 すっと通って高い鼻。
 三日月を描く薄い唇。

 どこを見ても美少女そのものだった。

 そう言えば、話で聞いたことがある。
 1-Cにすごい美少女がいるって。

 クラスのある場所は、A~D組までは1号館にクラスがあって、E~H組までは2号館にある。
 私はGクラスだったからCクラスとは棟が違う。

 人の噂は当てにならないし、あんまり他人を気にしない方だから、わざわざ見に行く事もなかったし、棟が違うから見かけることもなかったんだけど、噂通りの美少女で、ある意味びっくりした。

 あんまりジロジロ見ているのは失礼だと思って、すぐに視線をそらして席に座った。

 ざわつくクラスを見回すと、みんなこっちを見ている。
 正しくは、後ろの彼女なんだろうけどね。

 こんなに不躾にジロジロ見られるって、意外と身の置き場がないって言うか、あんまり気持ちのいいものじゃないって判った。
 そう考えると、美人じゃなくて良かったかも。

 ・・・と思うのはヒガミかな?

 このまま座って担任がくるのを待つべきか、それとも秀ちゃんの所に避難するべきか考えて、携帯の時計に視線を落とした時だった。
 また肩を叩かれた。

 当然、叩いたのは私の後ろの美少女だろう。

 何事かとゆっくり振り向いて、また彼女と視線が合うとにっこりと微笑まれた。

「私、松川 友紀。良ければ友達になってくれない?」

 美少女に似合う綺麗な声でそう、言われた・・・・・・。

< 7 / 49 >

この作品をシェア

pagetop