【しあわせ偏差値~短編集~】
彼がテーブルにやってきた
両手にケーキを抱えて

とうとうきた
佳代の心境

目の前に
名前入りの祝いの文字
板チョコに描かれている

「23歳の誕生日おめでとう」
彼の言葉

「ありがと」
極力嬉しさを
顔にださないようにした

ボーイが
シャンパングラスを運んできた

本番はここからだ
佳代は思った

彼の作業着の
内ポケットから
それは現れた

箱がひらく

「結婚しよう」
彼がいう

佳代は
下唇を強く噛んだ

わかってた
彼が自分の誕生日を
祝ってくれること

そして
この日に
プロポーズしてくることも
すべて予想通り

全部見透かされるなんて
ほんと不器用なんだから……

女はね
もっと予想外な
サプライズを待ってるものなの

でも
どうしてだろう

うれしい
たまらなくうれしい

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