水上の音楽

「雪だよ」

 テラスの柵に手を着いて、颯太はとてもとても嬉しそうに笑っていた。

私に笑いかけているのではなく、ずっと笑っていたのだ。


 子供なのは私じゃなくて、そっちの方だと思って、私は……、体中の力が抜けた。

 雪。
確かに雪は降る。この季節のこの土地には、当然のごとく。

横に立って雪ではなく、雪を見上げる颯太を見上げる。


 宙に出ていた分だけ、ひょっとすると逆行してる?

まさか。

いくら宇宙が神秘だからって。
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