月の雫[七福神大戦録]
突然投げかけられた言葉に、私はふと隣に視線を送る。
恵比寿は、ずっと空を見上げていた。
「……読んだんですか?」
「いや、そんな事しなくてもわかるさ。最近、アイツもおかしかったからね」
私もまた、空を見上げる。
「そう……ですか」
「無理する事は、ないと思うよ?俺達が、君を巻き込んでしまった訳だし。今というこの時間は、二度と戻って来ないからね……」
そう言った恵比寿の瞳に、ふと、影が帯びた気がした。
「先輩……」
そんな私に気付いたかの様に、彼は瞳を細めると、優しく私の頭を撫でる。
「ま、俺で良ければ、いつでも相談にのるよ?なんせ、君の頼れる優しい先輩ですから」
響きだしたチャイムと共に、恵比寿は「またね」と、軽快に此処をあとにした。
――私も、教室に戻らなくちゃ。
結局、御堂君とご飯食べられなかったし。
放課後、みんなに少し時間を貰って、御堂君とちゃんと話してみよう。
私の心は、何だか少しスッキリしていた。