月の雫[七福神大戦録]
『弁天、今までどこにいたんだ?お前が思っているより、事態はとても深刻だ』
『ごめんなさい。此処に降りた時、はぐれてしまったから。あなたを見つけるまで、私も苦労したのよ?でも、本当、逢えて良かったぁ』
そう言うと、弁財天は大黒天にふわっと抱き付いた。
重なりあう、二人の影。
声が出そうになり、私は咄嗟に口を押さえた。
大黒天は、ちょっと驚いた様子を見せたが、すぐに微笑むと、彼女の背中を優しくさする。
愛しむように。
大黒天って……あんな顔するんだ……。
そう思ったら、何だか怒りがわいてきた。
私と、態度全然違くない!?
ムッとなって、思わず頬を膨らませる。
『兎に角、無事で良かった。弁天と会えば、みんなも喜ぶ。それに、陽の力を持つ女なんだが、かなり自己中で滅入っている。同じ女の弁天が居れば……』
不意に、弁財天の拳に力が入る。
『――私、一緒に行くなんて、いつ言ったかしら?』
その声色の変化に、大黒天の瞳が大きく見開く。
凛とした、冷たくも感じる言い方に、私の身体が硬直する。