月の雫[七福神大戦録]
放課後。
保健室に集まった皆に、昨日の一件を話した。
「弁財天があちら側に回るとは、事態は深刻かもしれませんね……」
福禄寿が、険しい表情を滲ませる。
――が、私に向き直ると、その優しい瞳で微笑んで見せた。
「でも良かったです。二人共無事なんですから。よく頑張りましたね。流石、咲さんです」
「いえ、そんな……」
何だか恥ずかしくなって、私は思わず俯いてしまう。
「何が、良かったなんだよ……」
隅で黙って聞いていた、恵比寿が口を開くと、ずんがずんがと大黒天に近寄る。
「全然良くないだろ!?彼女は殺されていたかもしれない!!大黒!!そもそも、お前がしっかりしないから、招いた結果なんだよ!!」
そう、いい放つと、大黒天の胸ぐらを掴み、引き寄せる。
福禄寿が咄嗟に仲介に入ろうと、二人をなだめるが、大黒天は、表情一つ変えず、ただ、じっと彼を見据えていた。
「……あんたには、言われたくないな。言い寄って来る女、皆その気にさせておいて、誰一人本気にならない。いや、なれないと言った方がいいか?」
「……!!」
大黒天は、力強く恵比寿の手を掴みほどくと、乱れた着衣を整えながら、更に言葉を続ける。
「皆が人間だからか?結局、あんたは、あれから何一つも変わっちゃいない」
そう言うと、大黒天は静かに出て行った。
「……少し、風にあたってくるよ」
恵比寿も出て行ってしまい、保健室は静けさだけが残った。
初めて見れた、二人の本音。
そして、衝突。
困惑して、なんて言えばいいのか、言葉が見つからなかった。
「変な所をお見せしてしまい、すみません。咲さんが気にする事では、ないですから」
福禄寿が、すまなそうに言った。
「まあ、あの二人、何だかんだ仲良いし」
「でも……私、やっぱり行って来る!!」
私は、二人に礼をして、保健室を駆け出した。
『良いですね。青い春です。キラキラしていて眩しいですね〜』
『そっすか?面倒としか思えないすけど』
『仕方ないですね〜、私達は、もう一人の所にでも行きますか?』
そう福禄寿は、ダルそうな布袋の腕を引き、保健室を出て行った。
『ほら、布川君。一番若いのですから。青春はいいですよ』
『だから、俺は別に……!!ちょ、勘弁して下さいよ』