月の雫[七福神大戦録]
――ガチャ。
保健室のドアが開く。
『おや?どうしました?黒崎君、今はまだ、授業中ですよ?』
『アイツが倒れたって聞いたから、クラスを代表して様子を……』
大黒天は視線をおよがせると、近くの椅子に腰をおろした。
『そうですか、代表してわざわざ』
その様子に、福禄寿がクスクスと笑いだすと、彼は居心地が悪そうに、ゴホンと一つ咳払いをした。
『それより、どうなんだ?様子は』
『そうですねぇ、たいした事はないようですが……原因がわからない事には何とも。これは、私個人の見解ですが、おそらく、身体が光った事が、関係しているのではないかと……』
『月の雫の在処か?』
『さぁ……そこまでは。何かに反応している事は、間違いないと思いますが』
『そうか』
大黒天は立ち上がると、咲が寝ているカーテンをそっと開ける。
彼女のぐっすり眠っている姿に、ホッとしたように優しく微笑んだ。
『こいつは、こいつなりに必死なんだよな……』
『本当に、頑張っていますね。咲さんは。自分の事よりもみんなを気にして……あまり無理をしないで頂きたいくらいです』
『そうだな……』
『あ、そうでした、黒崎君。これ名前書いて下さいね』
そう渡された保健室利用者記入欄に、大黒天はささっと名前を書き、保健室を出て行った。