月の雫[七福神大戦録]


ガチャ!

再びドアが勢いよく開く。


『おや?今度はキミですか』


慌ただしく入って来たのは布袋だった。
息を切らし、何だか落ち着かない様子の彼は、一直線にベッドに向かうと、身軽にコロンと寝転んだ。


『影二センセ、俺少し休むっから』


『大智くん?どこか具合が悪いとこは?』


『別に』


『さては、最近キミに猛烈アタックしている、安財マキさんが関係しているのかなぁ?』


布袋は一瞬、ビクっと身体が硬直した。


『……知ってるんすか?』


『ふふ、情報源はヒミツですがね。大智くんがモテモテで大変そうだったと』


福禄寿がニコニコしながらそう答えると、布袋は安堵の息をついた。


『あれ?その反応は違いましたか?何か他に問題でも?』


『影二センセ……実は……』



ガチャ。

布袋が何かを言いかけたと同時に、ドアが開き恵比寿が顔を出す。


『あれ?大智も来てたんだぁ。やっぱり咲ちゃんが気になったのかな?』


恵比寿が、記入欄に書きながら言った。


『は?何の事っすか?』


『残念ながら、大智くんは仮病です』


『ていうか、何であいつの名前が出てくるんすか?俺は別に……』


『大智くんと違って、咲さんは体調がすぐれないのです。今隣で眠っていますよ』


福禄寿が心配そうに、隣のベッドに視線を送る。


『………それ本当っすか?まさか、奴らがまた何か?』


『いや、廊下でいきなり倒れたんだよ。俺もビックリしたけどね。別に怪しい者はいなかったよ』


恵比寿が腕を組みながら、椅子に座る。


『そっすか……』


ふと、終わりのチャイムが鳴り出した。
それと共に、廊下が騒がしくなってくる。


『じゃ、俺行くっす』


『大智くん。これ、記入して行って下さいね』


布袋は、面倒そうにしぶしぶと名前を書いた。


『そういえば、大智くん私に話があったのでは?』


『いや、何でもないっす』


布袋はそう言うと、五分休みで賑わう廊下に消えて行った。




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