━Holic━
失ってしまった少女
━━妃憂━━
「んぅ…」
カーテンを閉め忘れた窓からの日の光が眩しくて目を覚ました。
うっすら目を開け、何回か瞬きを繰り返す。次第にクリアになる、ぼやけていた視界。
「え、あれっ…」
今朝、眠りについた時は確かに隣にいたシイヤがいなくなっていた。
シーツが捲れている。人一人分空いたスペース。まだ温かい。シイヤ…?
ばっと体を起こした。
思い出したくない、嫌な記憶とリンクする。朝目覚めたらいなくなっているなんて…まるであの日と同じ。
やだ…こんなの、やだよ。急にいなくなったりしないで。もうあんな思いするのは嫌。絶対に、嫌なの…。
様々な感情が湧き上がってきて。徐々に不安に侵食されてゆく。それに突き動かされるまま、わたしはベッドを飛び出した。
「っと!あぶね」
「あ」
部屋を出ようとしたとき、わたしが開けるより先にドアが開いた。
その向こうには、今まさに探しにいこうとしていた人物が立っていた。
「急に出てきたりしたらあぶねーじゃん」
声を聞いた瞬間、自分でも驚くほどホッとした。
騒いでいた気持ちが静まってゆく。普段は優しくなんてできなくて憎まれ口しか叩けないけれど、それでも急になんの前触れもなくいなくなると、途端に不安になる。
本当に嫌いなのか、嫌いと思い込みたいだけなのか。それもたまによくわからなくなってしまうけど…やっぱり、今のわたしには彼の存在が大きいことは事実。
すごく、必要なんだよ。