━Holic━
「おっすげーな!お前もうそんなん貢がせたのかよ?」
するり、とミケの手から消えるネックレス。
取ったのは、いつの間にやらミケの横に立っていたこの店のナンバー1・司。
新人のミケの隣に並ばれるとその差は歴然とする。眼光からしてこんなにもちがうものなんだな…。
「貢がせたんじゃなくて、ユキさんがくれたんですー。人聞き悪いっすよ」
「へぇ!お前もうあのユキ様に貢がせたのか!やるじゃん新人のクセにっ」
「だからちがう…って、なにすんですか!俺相手にオラ営したって金もドンペリも落としませんって!!ちょっ…まじでギブギブギブっ!!」
長身の司が背後からミケの首を腕で締め上げた。
お世辞にも長いとはいえない手足を必死にバタつかせ、やっとの思いで開放されたミケが肩で呼吸する。
「でもお前、ユキ様の機嫌だけは損ねんなよ?あの子怒らせたら、この店なんかすぐつぶれちまう」
「はぁ…そんな怖いんですか」
「家が金持ちだからな。なんでもできんだよ。まぁ、ユキ様はシイヤがひどくお気に入りだし、お前がいる限りはだいじょーぶと思うけど」
冷やかすようにニヤリと笑う司。答えるように俺も微笑みを返す。
上手な笑い方なんて身に染みついている。本物の笑顔なんか浮かべられるわけないだろ。嘘の笑顔なしじゃ、この世界では生きていけない。