去り行く明日へ《短》
与一、お前が死んでから長い年月が経ったなあ。
あれから、何十年だ。
俺は今でも、あのままお前と別れちまったことを後悔してる。
俺が居ればどうにかなったんじゃねえかと、思っちまうんだ。
お前は家族思いだったよなあ。
可愛い嫁さんが待ってんだっていつもデレデレしてたよなあ。
まったくよお
あんな場所で呑気なやつだと思ってたがよ、違うんだな。
お前はすげえよ。
でもどうしようもねえ馬鹿だよ。
なあ、与一。
結婚なんかしねえって言ってた俺は、お前の言ってた通り、あの戦争が終わってからすぐに女房を持っちまったぜ。
賭けは俺の負けだよ。
なあ、与一。
賭けの払い分、俺はまだ一銭も払えてねえんだぜ。
お前はどうしようもねえ馬鹿だ、与一。
全部全部、置いてっちまうんだからよ。
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