WELT 〜時の涙〜
1st
コツコツコツ……
ゆっくりとした足音がしん、と静まり返った冷えた工場に響く。
ゆうに大人が二人は眠れそうな大きさの、中央が1メートルほどくぼんでいるベッドのような機械がいくつも列んでいるそこは、長いこと稼働していないのか一部を除き随分と埃をかぶっている。その不思議な工場の中央ほどに大きなモニターと機械を制御する為だろう、いくつものコンソールパネルが列んでいる。
足音の主は同じ歩調でその制御装置の所までくると足を止める。
「……そろそろ来る頃だろうと思っていたよ。我が息子よ」
ゆったりとした大きな革張りの椅子に腰掛けている中年の科学者風の男は振り返りもせずに足音の主を「息子」と呼ぶ。その声は少し疲れているようだ。
「『久しぶり』と言うべきか?……2500年ぶりだからな」
「ほう、そうだったかな?私には10日ぶりだが……」
「……これは、アンタの予想通りか?」
「いや…私は『あの子』が来ると思っていたよ。どうやら『ゲーム』はお前の勝ちのようだな『アストル』」
アストルと呼ばれた男はそうか、と感情のこもっていない声で応えながらそばにあった椅子を引っ張ってきて相変わらず背を向けたままの男のそばに腰を下ろす。すると膝丈までもある長い黄金色の髪がふわりと床に広がる。
彼は美しかった。細く撓やかな肢体は男性というよりは女性と錯覚させ、艶やかな白い肌に切れ長の澄んだ湖のような碧い瞳。そして桜色の薄く形のよい唇。どれ一つをとってもまるで、神々の寵愛を一身に受けたような存在だった。
「あいつを…『ミューラ』を私が殺した。あいつがそう望んだからな」
「あの子が…?ほう、それは私も想像出来なかったな。興味深い…」
「あいつは……マインド・コントロールを自己崩壊させたよ。唯一の主を守る為に…」
ゆっくりとした足音がしん、と静まり返った冷えた工場に響く。
ゆうに大人が二人は眠れそうな大きさの、中央が1メートルほどくぼんでいるベッドのような機械がいくつも列んでいるそこは、長いこと稼働していないのか一部を除き随分と埃をかぶっている。その不思議な工場の中央ほどに大きなモニターと機械を制御する為だろう、いくつものコンソールパネルが列んでいる。
足音の主は同じ歩調でその制御装置の所までくると足を止める。
「……そろそろ来る頃だろうと思っていたよ。我が息子よ」
ゆったりとした大きな革張りの椅子に腰掛けている中年の科学者風の男は振り返りもせずに足音の主を「息子」と呼ぶ。その声は少し疲れているようだ。
「『久しぶり』と言うべきか?……2500年ぶりだからな」
「ほう、そうだったかな?私には10日ぶりだが……」
「……これは、アンタの予想通りか?」
「いや…私は『あの子』が来ると思っていたよ。どうやら『ゲーム』はお前の勝ちのようだな『アストル』」
アストルと呼ばれた男はそうか、と感情のこもっていない声で応えながらそばにあった椅子を引っ張ってきて相変わらず背を向けたままの男のそばに腰を下ろす。すると膝丈までもある長い黄金色の髪がふわりと床に広がる。
彼は美しかった。細く撓やかな肢体は男性というよりは女性と錯覚させ、艶やかな白い肌に切れ長の澄んだ湖のような碧い瞳。そして桜色の薄く形のよい唇。どれ一つをとってもまるで、神々の寵愛を一身に受けたような存在だった。
「あいつを…『ミューラ』を私が殺した。あいつがそう望んだからな」
「あの子が…?ほう、それは私も想像出来なかったな。興味深い…」
「あいつは……マインド・コントロールを自己崩壊させたよ。唯一の主を守る為に…」