WELT 〜時の涙〜
終章
 再び現代。
「実に、実に興味深い!『マスター』を強制認識する為にマインド・コントロールを自己崩壊させるとは!!」
 いつのまにかアストルの方に振り返っていた男は興奮気味に詳細をアストルに求める。しかしアストルは、後は知らない、と口を閉ざす。
「…それで、お前はミューラとの約束を果たし占領した国家を解放し、存在してはいけない技術を消滅させ、歴史をただしたというのか?」
 中年の男はこれまた信じられないといった面持ちで問う。
「……それは私の意思だ。あいつの、ミューラの願いは真にこの『ゲーム』を終わらせることだ」
 アストルはそう言うと、自分の製造者である男の腹部を無表情に光剣で貫く。
 中年の男は呆然と穴の空いた自分の腹部を確認すると大量に吐血し、ゆっくりとその血を拭ってようやく自分が刺された事を認識した。
「がっ……はっ……な、何故だ……アス……トル……」
「この『ゲーム』に関わった存在は一人も残ってはいけない…それが私の出したミューラとの約束の答えだ」
 冷ややかにアストルはそう言うと、自分にもたれ掛かろうとする「父」を無情に蹴り倒す。男は腹部から吹き出した血の海の中でもがき苦しみ、やがて恐ろしい形相のまま事切れる。
 アストルは男が完全にこと切れた事を確認すると、自分がそれまで腰掛けていた椅子に再びゆっくりと座る。
「……ミューラ、お前との約束は果たした。……どうやら私の……じゅみょうも…ここまでのヨウだ……。マタ…オマエの……エガ、おガ…ミタ…カッタ…………」
 肘掛けから崩れ落ちた手から光剣の柄が転げ落ち、その音だけが静まり返った工場に悲しげに響いていた………。
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