短編集
蛹
目を開けると私は小さな虫になっていた。
私を見て誰かが言った。
「これは美しい蝶になるだろう」
私を見て他の誰かが言った。
「これは醜い蛾になるだろう」
誰かが私に声をかける度に、その言葉から薄いベールが産まれる。それは私の小さな体にふわりとかかった。無責任に投げ掛けられた、それはもう幾重にも重なって、もう身動き出来ない程の重さになった。
(中はドロドロに溶けて)
(誰も私の本当の姿など)
(もう、誰も覚えてはいない)
そうして私は蛹になった。
私を見て誰かが言った。
「これは美しい蝶になるだろう」
私を見て他の誰かが言った。
「これは醜い蛾になるだろう」
誰かが私に声をかける度に、その言葉から薄いベールが産まれる。それは私の小さな体にふわりとかかった。無責任に投げ掛けられた、それはもう幾重にも重なって、もう身動き出来ない程の重さになった。
(中はドロドロに溶けて)
(誰も私の本当の姿など)
(もう、誰も覚えてはいない)
そうして私は蛹になった。