透明図
サキは私の質問に答えず別の質問で返した。

「藤橋君のは、何色に見える?」

サキには、私が不思議な設計図が見えることを話していた。

小学校の時、私だけにしか見えない設計図が急に怖くなり、サキに泣きついたのだ。

最初サキは、笑って慰めてくれた。

それでも私は、サキには信じて欲しいと言った。

サキは、困った顔をして、それでも優しく、もちろん信じるよと言ってくれた。
あの頃の小さかった私にはうれしかったけど、でも今ならわかる。サキは、たぶん今も信じてくれていないのだろう。

もちろんそれが仕方のないことなのも今はわかる。

私だって突然サキに、サキの兄がカタコトの外国人で、父親が日本語をしゃべる白犬だと真面目な顔で言われたとしても、サキのことをかわいそうに思うしかできないだろう。

それでもあの頃の私は、サキのおかげで傷つかなくてすんだのだ。

ささやかだけれど救われたのだ。
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