透明図
私はとっさにポケットをあさった。

都合よくクッキーとチョコ菓子が一つずつ。

虫歯にするのはかわいそうなので、クッキーの包みをあけて差し出した。

それをみると、ノラネコはミャーと甘えた声をあげて、その場で食らいついた。

さっきの声は、気のせいだろうか。

もちろん気のせいであると解釈したほうが自然なのだが、不思議と私を捕らえてしまった。

私は、ちょっとだけ話しかけてみる。

なにせ設計図をもったネコというものは初めてだったから、もしかしたら何か特別なのかもしれない。

「ねぇ…、ノラちゃん」

私は猫撫で声でニッコリと微笑んでみるけど、そのネコはまったく意に返す様子もなく、クッキーのカスを舌ですくっていた。

やっぱりネコはネコ、私の言うことが聞きとれるわけもないか。

そりゃそうだとは思うが、まだ少しだけ未練があった。

でも念のため、もう一度話しかけてみる。

サバのような設計図は、そのネコの頭上でまだきらめくように漂っている。

「ねぇ、アンタもしかしてサバが食べたいの?」

ノラネコは、一瞬だけだが体をびくつかせた。

サバのような設計図は、いよいよ輝きを増しはじめた。
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