透明図
私はふと気になったことがあったので、話をそらしてみた。

「ねぇ、あんた名前は…?」

「んん…、名前ねぇ。」

面倒臭そうに黙り込む。

「そうよ、名前ぐらいあるでしょ?ミーちゃんとかチーちゃんとか無いの?」

「オイラ男だよ?まぁ名前はいっぱいあってな…」

私は思わず立ち止まった。あぐらをかいてたネコは、順当にカゴに頭をぶつけた。

「イッパイアッテナ!あんたイッパイアッテナなの!?うわぁ、なつかしい。」
「うわ、なんだいいきなり」

ノラネコは驚いた。驚くノラネコを見るのは初めてではなかったから、あまり新鮮味はなかった。

「イッパイアッテナじゃねぇよ、ただ単純にいろんな名前で呼ばれてるってだけで…」

「わかってるよ、イッパイアッテナ。クロネコのチビは元気にしてる?」

「なんの話だい、オイラそんな名前じゃないよ」

さっきまで生意気に思ってたノラネコだったけれど、なぜだか急にかわいく思えてきた。
< 37 / 83 >

この作品をシェア

pagetop