透明図
午後の授業の終了と共に、思い思いにクラスがざわつきはじめる。

部活の準備をはじめる人、談笑する人、机にうつぶせる人、ようやく起きはじめる人、今日の私は噂話をする人だった。

一番の話題は、カラスや野良犬、野良猫の話だった。

私が知らないつい数日の間に、その数がひどく増えたのだそうだ。

原因は、うちの地区の保健所があまり精力的に活動していないことや、カラスが巣を作りやすい森林、いろいろあるそうだ。

でも、最近になってその数が急に増えはじめたのは、もっと本質的には、町中に死肉が増えはじめたことではないかと言うのがもっぱらの噂だそうだ。

ハトは、まだ死に続けているそうだ。

もうそれは、私とサキだけの思い過ごしではなくて、街中が感じはじめていることだった。

そしてそれは、私達が思っていた程には小規模なものではない事を知った。

私は少し怖くなった。なんだか恐ろしいことになりそうで。

ミヤやユキは、保健所が頑張りはじめたら猫や犬がたくさん死んでしまうねと言いあっていた。

私も相槌をうちながら、そうなったら町中がお墓ばっかりになっちゃうねと答えた。

ミヤは笑って、わざわざお墓は作らないから余計な心配だよと突っ込んでくれた。

そっか、そうなんだ。それならせめて私だけでも心のどこかに彼等のお墓を作ってあげよう。

私は、ふとノラが気になった。
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